江原由美子、『社会学事典』(弘文堂)

生活世界

本来はフッサールの用語であり、学的認識の世界と区別され、それを基礎づける日常的・自然的な態度による知の世界を意味するが、シュッツやバーガー、ハーバーマスなどにより、社会学的な用語として使用されている。現象学的社会学の基礎をつくりあげたシュッツは、フッサールの生活世界概念を踏襲し、科学的認識の世界、特に社会学的な認識の世界に対置される、日常生活者の社会的意味世界を生活世界と呼んだ。その後、生活世界自体が主題化されるにしたがって、生活世界概念は狭義の日常生活世界概念(「すっかりめざめた」大人の「Working」の世界)をこえて、想像の世界や宗教的態度の世界などの多元的リアリティを含みこむ、生世界全域を指す概念として、使用されるようになった。バーガーはこうした用法を採用し、生活世界を、人間が住まう意味的世界として概念化した。またハーバーマスは労働と相互行為、道具的理性とコミュニケーション的理性を区別し、後者を原理とする世界を生活世界と呼んでいる。