□■□■□■□■□日刊ルーマンクイズ・第22問■□■□■□■□■

まずは昨日の解答から。

Q21. ゴットハルト・ギュンター由来の概念で、二分コードに対し、第三の値として立ち現われる、別のコードを何というか。

A21. 棄却値(Rejektionswert)。
機能システムにおいて制度化されている二分コードを用いては、全体社会を描写することはできない。もちろん、各機能システムはシステムであるがゆえに、世界ないし環境を観察し、各機能システムにとっての世界をシステム内に構成する。また、他のシステムの意味構成を前提としなければならないことは自明である。しかしこのことは、たとえば経済システムが倫理的善を考慮しなければならないということを意味しない。むしろ〈支払い/不支払い〉の二分コードは、〈善/悪〉の値を排除し(てい)なければならない。


…学問を二値的にコード化されていて、真か偽かのみを確定しそれ以上何も確定しない機能システムと理解するならば、全体社会の描写は学問たとえば社会学の見地をそのまま出発点にはとれないのである。肯定的・否定的の二値への限定が放棄されえないという点、そしてそれにもかかわらず機能システムの完全な描写は、システムが異なればコード化の仕方も異なることを考えに入れなければならないという点、この二つは学問にも経済にも、また法にも政治にも、同じようにあてはまる。……

あるひとつの機能システムが他の機能システムのコードに従わ【ない】とはどういう意味なのかをより厳密にとらえようとするなら、前もって次のように言っておかねばならない。すなわち、他のシステムのコードに従わないといっても他のシステムの価値が重要でない主張しているわけではない、と。当然ながら、政治は一定の財にかんしてだれが所有者であり、誰がそうでないかを全く無視するわけにはいかないし、また学問の現況に照らして何が真の認識であるのかないのかを無視することもできない。……

機能的分化はしかしコードのレベルでは、【区別としてみた】他のコードが無視されうることを意味する。分化にともなう離隔は、価値自体にではなく、価値の区別すなわち価値がコードに現われる形式、ただひとつの(一元的)切り換え作動(つまり否定)をもっており第三の値を排除するというその形式、に関係している。あるいは別のもっと簡単な言い方をするなら、ひとつの機能システムは、【他の】システム用の【他の】コードが【選択状況をつくり出す】という点を考慮しなくてよい(また考慮してはならない)のである。ゴットハルト・ギュンターは区別に関連したこの無関心(中立)の立場を【棄却値】(Rejektionswert)と呼び、また棄却されたコードの価値とつながりをつけるのにこの棄却値を用いることを(連言/選言と区別して)超言(Transjunktion)と名づけている。……
(『社会の経済』70-72頁)

社会の経済

社会の経済






Q22. 観察とは区別を用いて一方の側を指し示すことであった。「区別」(distinction)「指し示し」(indication)はそれぞれ、スペンサー=ブラウンのいう〈形式〉概念に由来する。
空間をAと非Aとに分割する区別は、自己完結(perfect continence)である。つまり、区別された一方の側から他方への移動が、この区別によって設けられた境界線を横断crossすることなしには不可能であるような区別である(たとえば平面上では円は区別を与えている)。この、区別の導入によってAであるか非Aであるかのいずれかとして指し示しうるようになった空間を〈形式〉とよぶ。
スペンサー=ブラウンは区別されていることを示すために┐というマークを用いる(平面上の円に当たる)。さて、このマークの内側の空間をなんとよぶか。






答えは明日。

□■□■□■□■□ □■□■□■□■□ □■□■□■□■□