システム理論

システム[英]system

システムとは,2っ以上の要素からなる集合における要素間の関係のことをいう。システムの特徴としては,システムには内と外を区別する境界があり,システムと環境との間で投入(input)と産出(output)が行なわれていること,システムの状態は時間的な流れのなかで特定できること,システムには目標があり,この目標達成のためにシステムの活動が行なわれていること,があげられる。そして,このようにある対象を要素間の相互依存としてとらえることを〈システム思考〉と呼ぶ。システム思考は20世紀になって登場した科学観であり,全体と部分に関する新しい考え方を提示し,伝統的因果論を否定することによって,第二次大戦後,科学方法論として確固たる地位を占めるにいたっている。システム思考の系譜としては,有機体論的モデルにもとつくシステム論と機械論的モデルにもとつくシステム論とがあるが,現在では情報,制御などの概念によって両者の系譜を統合する方向で理論の発展が図られている。
→社会システム論
(友枝敏雄)

システム論[英]systems theory

相互に作用しあう諸要素の集合と定義されるシステムの概念を基礎とするシステム論は,対象を構成する要素を単離して研究する近代科学の分析的・原子論的方法とは異なり,諸要素全体の関係をとらえようとする。システム概念の適用による,またその適用の方法についての,あるいはシステム概念自体についての研究は一括して〈システム論〉,または〈システム理論〉と呼ばれる。システム科学,システム工学,システム哲学などに分かれるが,起源と性格の点で2っの流れを指摘することができる。

一つはオーストリア出身の生物学者Lv.ベルタランフィが20世紀半ばに創立した一般システム理論の流れである。これは生物学におけるシステム論的アプローチから心理学や社会科学へと拡張,一般化した理論で,全体には部分に見られない特性が創発すると考える全体論を強調する。全体論は近代科学の機械論*と対決する立場からすでに久しく唱えられていたが,それがシステム概念を通じて科学理論として定式化されたといえる。要素の集合であるシステムがより上位のレベルからみれば一つの要素であることに注目し,それをホロン*と呼んだA.ケストラーの階層の理論とも結びついてこの流れは発展し,システム哲学(E.ラズロー)や全体論的医学(ホーリスティック・メディスン)などとの流れとの関連が深い。もう一っは工学や経営学に発し,それは複雑なシステムの分析のため要素間の結合関係や状態の遷移を把握し,あるいは諸要素を組み合わせて目的に沿うシステムを合成する方法論をめざすシステム工学的な流れで,この流れにそう一般システム論もG.1.クラーらが提唱している。

これらは,既存の学問とは異なる視点からの研究や,専門分化した学問間の交流を,システム概念を用い競合的に推進しているとみられる。またシステムの成立や活動に関して,システム論は通信,制御,目的,自己組織化などの概念を擁するサイバネティックス*と連携を強めている。
(佐藤敬三)

自己組織性[英]self-organiza-tion

混沌状態からの複雑な構造の自律的形成が自己組織で,生命の発生や社会構造の成立などはその好例である。実際,1950年代からS.W.フォックスは自己組織現象として生命の起源の研究を行なっていた。1.L.フォン・ノイマンが自分より複雑でさえあるコンピューターを作りうる自己増殖コンピューターの原理を解明し,サイバネティックス*では神経網が経験を通して自己組織するモデルが探究され,60年代にはW.R.アシュビー,H.v.フェルスターらは自己組織における環境の役割を強調した。70年代になりM.アイゲンのハイパーサイクル*説,H.ハーケンの協同現象理論(シナジェティックス*),1.プリゴジーンの散逸構造論*,H.R.マトゥラナ,FJ.ヴァレラの自己制作理論*など,技術予測家E.ヤンチが自己組織パラダイムの現出と呼ぶほど発展し,これはニュー・サイバネティックスとも呼ばれている。組織すると同時に組織されるという自己の概念から循環や自己言及の論理など,哲学的に興味深い問題も提起されている。
→システム論
(佐藤敬三)

1島謙轡[英]theo「yof

チリの生物学者H.R.マトゥラナとFJ.ヴァレラは,アメリカの自己組織研究の開拓者卜1.v.フェルスターの下での研究などを通じて,生物を特徴づけるためのオートポイエーシス(autopoiesis)なる概念を創案した。これはギリシア語の「自己」と「作る」を結びつけた言葉で,〈自己制作〉と訳してよいだろう。生物に与えられた過去のさまざまな定義にかえ,彼らは自己を生産しっづけることを生物の特徴とした。彼らの理論は組織の自律的な形成を重んじる自己組織理論の一つであるが,概して組織の複雑化の過程が対象とされるのに対し,組織の制作活動の産物が組織それ自体であることに注目する点で特異である。この自己制作の概念には組織を形成する諸要因間の円環的関係,目的や機能の概念を用いない組織の特徴づけなどが結びっいている。彼らは,定着した観念を抱かせるなじみの言葉では,こうした新しい観念を直接表現することができないと考え,あえて耳なれない〈自己制作〉なる言葉を用いている。(佐藤敬三)

【社会システム論】[英]S・CialSyStemthe・ry
20世紀の科学観の一つである〈システム論〉もしくは〈システム思考〉にもとつく社会理論。第二次大戦後アメリカの社会学者T.パーソンズによって確立され,その後N.ルーマン,1.ハーバーマスによって新たな展開がなされている。パーソンズは「社会システム』(1951)において,行為システムの一般理論(→行為理論)の一環として社会システム論を展開した。社会システムとは,自己と他者との間に〈役割期待の相補性〉の成立している相互行為のシステムであるとし,社会システムの構造とは,個人レベルからみれば相互行為を通して創出される役割もしくは地位の体系であり,社会レベルからみれば役割や地位に配分される社会的資源配分の体系であるとした。その後,社会システムには,A(Adaptation適応),G(GoalAttainment目標達成),1(lntegra-tion統合),L(Latent-patternMaintenanceandTensionManagement潜在的パターンの維持と緊張処理)の4っの機能的要件があるとして,有名なAGじ4機能図式を定式化した。AGIL4機能を全体社会のサブシステムと対応させると,A一経済,G=政治,ト法,L=文化と教育となる。機能的要件とは社会システムの存続のために要請されるものであり,パーソンズの機能的要件の考え方を明確化すると,社会システムの構造はAGlL4機能を充足するように構成されているが,機能的要件が充足されなくなるとそれを充足する方向へと変動する,となる。ところでパーソンズの関心の中心は,社会システムの変動ではなくて,社会システムの存続がいかにして可能になるかということにあったため,彼は,社会変動を社会システムの不均衡化一再均衡化過程としてとらえ,この不均衡化への契機として逸脱行動に注目するにとどまっている。しかし,パーソンズによって社会システムの安定化や変動を,社会システムの構造と機能的要件から説明する構造=機能分析の原理が確立されたことは,高く評価されてよい。パーソンズとほぼ同時期にアメリ社会学の中心人物であったG.C.ホーマンズもまた,社会システムは対内システムおよび対外システムからなるとし,この2つのシステムをそれぞれ,活動,相互作用,感情,規範の4っの相互関係によって理論化することを提唱した。パーソンズの社会システム論が有機体モデルを範としていたのに対して,ホーマンズの社会システム論は機械モデルを範としていた。パーソンズ以後の代表的な社会システム論者の一人であるルーマンは,社会システムを意味構成システムとしてとらえている。これは,社会システム    の構成要素を行為ではなくて意味に求め,社会システムを意味連関のシステ
ムとしてとらえるものであり,M.ウェーバーの行為理論の中核をなしていた意味概念を社会システム論に再生したものである。そして,〈複雑性Komplexitat>を鍵概念にして社会システムの構造と過程の説明を行なっており,これは,社会システムを自己組織系としてとらえ,構造による制御や制御システムそのものの変化を理論化する試みである。これに対して,ルーマンとシステム論論争を行なったハーバーマスは,〈労働(目的合理的行動)と相互行為(コミュニケーション行為*)〉〈システムと生活世界〉などの概念を提示して,彼独自の社会システム論を展開している。彼はパーソンズの社会システム論を積極的に受容しているが,両者の違いは,パーソンズの社会システム論の目的が〈社会システム〉の存続の説明にあったのに対して,ハーバーマスのそれは,システムの制御能力の増大による生活世界*の合理化の進展と抑圧的支配の浸透に警鐘をうちならすことにあると指摘できる。っまり,システム統合と社会統合との不均衡を不断に生み出していく後期資本主義の正当性の基盤を批判していくことこそ,ハーバーマスの社会システム論の最大の目的なのである。このようにパーソンズによって確立された社会システム論は,ルーマンハーバーマスなどの試みによって,今日ではきわめて多様なものになっている。すなわち,社会システムの分析単位を行為ではなくて意味や情報に求める試みがなされており,また従来どおり分析単位として行為を措定するにしても,行為の内実を人間の言語能力(コミュニケーション)に求める場合と,道具能力(労働)に求める場合とでは,かなり内容を異にする社会システム論の展開が可能になるのである。したがって社会システム論は,システム論そのものとは似て非なるものになっているといってもよい。しかし,これらの多様な社会システム論にシステム論固有の方法論的な特色をさがすならば,それは第1に,伝統的因果論を否定して構成要素の相互連関を強調する立場であり,第2に,システムの構成要素を実体概念としてではなくて関係概念として確立しようとする立場である。これらの方法論的特色をもっとも自覚的に摂取しているのはルーマンである。一方,ハーバーマスの提示するコミュニケーション行為と生活世界という概念は,現代社会分析に一定の有効性を確保しているといえるであろう。社会システム論は,日本においては戦後,アメリ社会学の導入とともに紹介され,富永健一の「社会変動の理論』(1965)や公文俊平の『社会システム論』(1978)や今田高俊の『自己組織性』(1986)などの成果を生み出している。
(友枝敏雄)