野生の思考、PTA、渋谷にて。【第一夜】

さて前回の日記の日付を間違えてしまったのでこれが実際には7日(金曜)の日記であるわけだが、書いている現時点で日付をまたいでいるので正当化しておくことにする。
7日(金)に渋谷オーチャードホールにて《菊地成孔コンサート2007[第一夜]菊地成孔とペぺ・トルメント・アスカラール》が催され、このチケットを直前に唐突に入手させられたぼくは、非常に長い時間の間隔のあとで(つまり久しぶりに)渋谷を訪れた。
驚いたことに、渋谷のブックファーストが店舗ビルの改修工事に伴い閉店していた。友人と待ち合わせるときも恋人と待ち合わせるときも出会い系サイトでHITしたOLと待ち合わせるときも「とりあえずブクファ前で」と10年間言い続けてきたぼくには、これは驚きだ。
http://www.book1st.net/blog/topics/
ちょww渋谷文化村通り店、て旭屋書店があった場所じゃないのか。ということは旭屋はないのか、移動したのか。工事中の元・ブクファ前で待っていた連れによれば、石原政策で渋谷からマクドナルドやアナログレコード店が消えていっているらしい。マクドナルドがこの世から消え去ることには粉砕玉砕大喝采だけれど、CISCOHIPHOP、TECHNO、HOUSE店が消えるのはどうなのか(ぼくもネット通販でしか買わないけど。若い人たちはどうなのかなあと思って)。次のディケイドはおおよそx8年に用意され、x9年にはもうそのディケイドの総括・完全否定が終了している(まだ1年残っているのにね)、というパターンを当てはめるなら(このパターンについて、前半は今日菊地氏が言っていた。後半は昔、椹木野依が言っていた)、ブックファースト渋谷店の終わりとCISCO TECHNO店の終了は、00年代の終わりを象徴する「終わり」だと思う。

さてペペ・トルメント・アスカラールのコンサート・ホールでの演奏だが。じつのところ『南米のエリザベス・テイラー』も『野生の思考』もぼくには必要のない音源で、CDはなぜか探せば見つかるのに(必要な音源に限って探しても見つからないというマジカルな部屋に住んでいるのだけど)iTunesで再生することは、一年に一度ぐらいあれば良い方、という程度の位置づけだったのだが、ライブはきわめて感傷的に聴き入った。おそらくペぺの楽曲は(委嘱作品やカバーも多いとはいえ)菊地氏がある種の「感傷」を実験的にシミュレートし、計算しつくした上で構築されたものであって、菊地氏が感傷的に演奏することはありえないと思う。観客も、あれほどの大ホールを満員にしている人々であるにもかかわらず、感傷的に聴取しているものは誰一人としていない。ぼくを除いて。もちろん、「なんらかの感慨」「感情」を、それぞれに喚起させられてはいるのだろうけれど、けっして感傷的になどなっていない。ぼくを除いて。そもそも「アルゼンチンタンゴ中南米幻想文学をインスピレーションの源に、現代音楽とラテン・ラウンジを繋ぐ、ストレンジ・オーケストラ」というストレンジなものを聴きにドレスアップした人々が大集合しているという事態がストレンジなことなんだが、いわゆる感傷を排除するストレンジさがペペの中心であって、感傷的になろうとしてもなれない、というストレンジで貴重な音楽がペペ。ぼくは幕間に赤ワインとシャンパンの両方を飲んでしまっていたので、バンド演奏の複雑さによって酒デリックになっていたのかもしれない(そもそもぼくはDCPRGサイケデリックにしか関心がないのだった。菊地氏の音楽に関しては。キノコもLSDも合法的にあるいは容易に入手できなくなった東京で、菊地氏の音楽に価値があり続けるとは思えない)。酒デリックになったのは生まれて初めてだ。そんなものはぼくは認めていなかったのだから。酒で精神状態が異常に変容してしまうような輩はぼくは嫌いだ。でも、酒デリックはそれはそれで、(それほど異常ではないという意味で)よいものだと思った。音楽によって感傷的になることなどありえなかったぼくにとっては、「なんと貴重な作曲家であることか」と感動せずにはいられなかった。
幕間のワイン、は、菊地氏がオーチャードホール側に用意させたもので、赤ワインはタンクレディー。シャンパンは忘れた。タンクレディーの芳醇さは異常。
新譜の先行販売が会場で行われ、サイン会もあったりして、ぼくは「菊地さん、ニコニコ動画とか観ますか?きのう98年のPIT-INでのライブ音源があがってましたよ!音質もよくてあれはいいブートレグですよ!」かなんか言いたかったのだけど、とても混雑していたので、退散した。


南米のエリザベス・テーラー

南米のエリザベス・テーラー

野生の思考

野生の思考

【追記】セットリスト
夜の全裸
孔雀
はなればなれに
生け花
組曲ヴィオラトリコロール」より 第2楽章 赤
プラザリアル

―休憩(20分)―

組曲ヴィオラトリコロール」より 第1楽章 紫
京マチコの夜
ルック・オブ・ラブ
チェルシー・ブリッジ
儀式
ルペ・ベレスの葬儀

―encore―

組曲ヴィオラトリコロール」より 第3楽章 金
ユー・ドンノー・ワット・ラヴ・イズ

【追記2】そうか、客席のライトを上げた後で「いろいろ、ちゃんと見ましたよ、miumiu二人、とか」(客席爆笑)ってMCはhttp://www.kikuchinaruyoshi.com/dernieres.php?n=071115035405のことだったのかww。miumiu着た可愛いコが2人いたっていう意味かと思った。


せっかく渋谷に来たのだからと、HMVに寄ってみた。家の外でCDを買うなど10ヶ月ぶりのことだった(おそらく10ヶ月前に、Perfumeのファンサービス・スイートを田町のTSUTAYAで買って以来。中古盤屋に10月に行ったけど。新譜を買うという意味では)。
例によってお買い物リスト。
くまなく探して買った、という感じじゃなくて、ぼけーとしながら目に入ったものを購入。

少年ヤング

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BEAM

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MOTIVATION 6 Adult Oriented Click Nonstop-Mix by MOODMAN

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Love Tribe

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Most of the Remixes...

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MARQUEE vol.64 (64) マーキー64号

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あと、定期購読している(笑)DTMマガジンでも中田ヤスタカインタビューが。ヤスタカ、新譜でハード音源一切使ってないんだって。
DTM MAGAZINE 2008年 01月号 [雑誌]

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