“オーディション”(2000)監督:三池崇史

またまた村上龍原作の映画をみました。

オーディション (幻冬舎文庫)

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三池監督2000年には4本撮っている。

「サイコ・ホラー」のくくりで売り出されているわけだけれど(レンタルビデオ向けだわな)、「いわゆる」サイコ・ホラーの痕跡が微塵も感じられない(椎名英姫タソが貞子みたいにうつむくシーンぐらい)ところが面白い。三池監督は“羊たちの沈黙”も“リング”も観てないんじゃないか、というよりたぶんバカにしてんだろう。
だいたい前半のおっさん二人の淡々としたドラマはなんなんだ。普通過ぎる。異常だ。こんなに普通で淡々としたホラー映画なんて観たことがない。70年代のホームドラマみたいだ。こういうレトロな描写が得意なのだろうか。すばらしいの一言。
椎名英姫のコスチューム姿、針を一本一本刺していくときの満面の笑み、サディスティックな高音の声、なんと素晴らしいものがこの世には存在するのだろうか。
クラシック・バレエをしていた幼少期、太ももに焼けた鉄の棒が押し付けられる。真っ白なレオタードに真っ白な肌の幼い少女が痛みにもがき苦しむ。なんと美しいイメージを映画というものは現実化するのだろうか。
これらの美しい映像によって、《チャイルド・アビューズ》→《トラウマ》→《サイコパス》→《サディスト》なる、かくも醜い因果図式がいかに嘘っぱちであるか、明らかになる。椎名英姫に関してはすべてが完璧に美しい
ただしやはりまた再びこの映画を観たとしたら、前半のドラマの異常さに笑うだろう。

評価は★4つ。
満点にしたいところだけれど、石橋凌の失神中の幻覚が邪魔で、マイナス。

オーディション [DVD]

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