いやいやまだまだ重回帰(1)
年齢が高いほど同性愛嫌悪が強いことを見た(http://d.hatena.ne.jp/hidex7777/20051116/p2)。ただし、それが「コーホート効果」なのか「加齢効果」なのかは単年度の調査からは見出しにくい。そのため判断をペンディングしておいた(http://d.hatena.ne.jp/hidex7777/20051115/p1)。
ただし、{教育年数}変数について検討した際に発見したように(http://d.hatena.ne.jp/hidex7777/20051118/p3)、最終学歴が「旧制」の教育機関である場合と「新制」の教育機関である場合とで、{教育年数}の{同性間}への効きかたが逆だった(「新制」の場合学歴が高いほど寛容、「旧制」の場合学歴が高いほど非寛容)ことから、「戦前世代」と「戦後世代」とのコーホート・ギャップと見ることもできる。
今日は{婚姻経験}との関連をみたい。{婚姻経験}によるギャップが「ない」ばあい、婚姻経験は当然年齢との相関があるため、「加齢効果」ではなく「コーホート効果」である、という見通しが立てられる。
また、{婚姻経験}は、いわゆる"family value"との結びつきが強いと考えられるため、{婚姻経験}によるギャップが「ある」ばあいにも、それなりの知見をもたらすと考えられる。
まず、{結婚状況}(3値)と{同性間の性的関係}(4値)のクロス表は以下の通り:
同性間性的 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
結婚状況 | 例外なく悪い | たいていの場合悪い | 必ずしも悪くない | 悪くない | 非該当 | 合計 |
有配偶 | 32.7 | 26.3 | 32.2 | 5.3 | 3.5 | 100%(2061) |
離死別 | 39.4 | 28.3 | 24.5 | 2.5 | 5.3 | 100%(322) |
未婚 | 14.3 | 20.9 | 43.5 | 17.7 | 3.7 | 100%(407) |
独立性の検定(カイ二乗検定)は1%水準で有意。注目に値するのは、「未婚」(政治的に正しくは非既婚とでもいうべきだろうが)の6割以上が同性愛嫌悪を示していない点だろう。また逆に、「有配偶」の6割近くが、「離死別」の7割近くが同性愛嫌悪を示している。
{婚姻経験}ギャップはあった。ではこれは「コーホート効果」ではなく「加齢効果」なのだろうか。結論は重回帰分析をすれば(婚姻経験ギャップをとりのぞいた年齢による効果を見ることができるため)わかることだが、その前に{婚姻状況}と{年代}のクロス表を、列方向比率と行方向比率の両方を出力してみる:
結婚状況 | |||
---|---|---|---|
年代 | 有配偶 | 離死別 | 未婚 |
20歳代 | 4.3 | 1.6 | 58.2 |
30歳代 | 14.3 | 4.0 | 21.1 |
40歳代 | 19.8 | 5.6 | 8.4 |
50歳代 | 26.3 | 14.6 | 6.1 |
60歳代 | 20.1 | 24.2 | 3.9 |
70歳代 | 12.5 | 30.1 | 2.0 |
80歳代 | 2.6 | 19.9 | 0.2 |
合計 | 100%(2061) | 100%(322) | 100%(407) |
結婚状況 | ||||
---|---|---|---|---|
年代 | 有配偶 | 離死別 | 未婚 | 合計 |
20歳代 | 26.9 | 1.5 | 71.6 | 100%(331) |
30歳代 | 74.9 | 3.3 | 21.8 | 100%(394) |
40歳代 | 88.7 | 3.9 | 7.4 | 100%(460) |
50歳代 | 88.3 | 7.6 | 4.1 | 100%(615) |
60歳代 | 81.5 | 15.3 | 3.1 | 100%(509) |
70歳代 | 71.0 | 26.8 | 2.2 | 100%(362) |
80歳代 | 45.4 | 53.8 | 0.8 | 100%(119) |
同じデータから作成したクロス表なので当然カイ二乗値は同じで、1%水準で有意。
上の、列単位で合計を出した表から、「未婚」の8割が2‐30代に固まっていることがわかる。下の、行方向で合計を出した表から、「80歳代」の5割以上が配偶者と「離死別」していることがわかる。また同様に下の表から、各世代ごとの「未婚」率は年代が高いほど低くなり、これは{婚姻経験}には「コーホート効果」があることがわかる(2‐30代は「未婚」かもしれないが、それ以上は「非婚」である可能性が高い)。
先に述べたように、「同性愛嫌悪」への年齢ギャップと婚姻経験ギャップから婚姻経験ギャップをとりのぞくために、ここで重回帰分析をしてみる。
外的基準(従属変数)は「同性間2値」で、{悪い=0|悪くない=1}のダミー変数とした。
説明変数は{年齢}と{婚姻経験(ある=0|ない=1)}のダミー変数とした。
分散分析表から、F値は239.0076266で、
- 仮説H0:求めた重回帰式は予測に役立たない
はたぶん余裕で棄却できる(確率が1.58241E-96となっているが要するに限りなく0に近いということでしょう。たぶん)。
回帰係数は以下の通り:
変数名 | 回帰係数 | 標準誤差 | t値 | 確率 |
---|---|---|---|---|
年齢 | -0.01308125 | 0.000659257 | -19.84240541 | 4.58006E-82 |
婚姻経験 | -0.049938401 | 0.03131113 | -1.594908952 | 0.110845982 |
定数項 | 1.047462429 | 0.037952869 | 27.5990314 | 1.9436E-148 |
確率をみると、{年齢}に関しては有意だけれど{婚姻経験}については次の仮説が棄却できない:
- 仮説H0:その説明変量は予測に役立たない
……ええと、まとめると、{婚姻経験}と{同性間関係}を取り出してクロス表で検定すると有意だけれど、重回帰分析にかけて{年齢}の効果をとりのぞくと、有意でなくなる、ということがわかった。
ああ、そうすると、{婚姻経験}は効いてないので、「加齢効果」よりも「コーホート効果」の見込みが立てられる、ということか。
うーん、これでいいのかな?
わかったような、そうでもないような。