重回帰分析に向うよ3

今日は居住地に関して。
JGSS-2001は「層化2段無作為抽出」によってサンプルが抽出されている。http://ssjda.iss.u-tokyo.ac.jp/gaiyo/0250g.html

6×3で計18層。

このうち、SIZE変数に1から3の値が入っているので、これと「同性愛2値」でクロス集計すると、カイ二乗検定1%水準有意で、関連性あり。

同性二値
居住地 悪い 良い 非該当 合計
13大都市 52.5 44.4 3.2 100%(507)
その他の市 55.2 41.9 2.8 100%(1620)
郡部 62.7 30.9 6.3 100%(663)

これ、{13大都市}と{その他の市}のみの2カテゴリで検定すると、独立してる(関連性なし)と出るので、いっそのこと{都市部、郡部}の2カテゴリに集約してしまいたい。

結果はこうなった:

同性二値
居住2値 悪い 良い 非該当 合計
都市部 54.6 42.5 2.9 100%(2127)
郡部 62.7 30.9 6.3 100%(663)
周辺比率 56.5 39.7 3.7 100%(2790)

カイ二乗検定では当然1%水準有意で非独立。
しかしこれ、解釈に困る。単純に考えれば、「田舎者は権利意識に欠ける」とも考えられるが、「情報へのアクセス率」ということで考えれば、農村地域だからテレビがないとか新聞が届かないなんてことは考えにくく(雑誌を読む文化がない、ということは考えられるが)、地域規模による文化水準の差異の【要因】自体が謎だ。
「資本主義的都市文化は同性愛者を可視化し、そのことが同性愛者のアイデンティティ形成に資するとともに、同性愛嫌悪的イデオロギーにも資した」(デミリオ(大意))というところから出発すると、「農村部では実はいまだに『前近代的な』性文化が残存しており、同性間の性的関係にも寛容である」という仮説を立てることもできる(そして以上の検定からこの仮説は棄却される)。

また、「社会進化論的に、同性愛嫌悪的イデオロギーを備えた共同体のほうが、そうでない共同体よりも生存確率が高まる」という仮説を立てることもできる。この仮説は上の検定によって「棄却されない」のではあるけれど、「正しいことが証明される」わけではない(自分で書いておいてなんだけど、この仮説が現代社会に適合するとは考えにくい)。

おそらく、都市部では同性愛に寛容な意見を表明してもそれほど強い反発がないだろうという「予期」がなされる(つまり「表明」の必要はない)のに対し、郡部では同性愛に非寛容な意見をみなが持っているだろうという「予期」がなされている、と考えるのが無難ではないか。
両者ともに「表明」の必要がない点では同一条件。
ただし、都市部は流動性と多様性を特徴とする、という一般的な条件を加味すれば、都市部では「確率論的思考」を可能とする条件が整っているといえる。「確率論的思考」とは、仮に10人中7人が自分の意見に反発したとしても、3人の同意が得られるというメリットに遭遇するチャンスがあるだろうと想像できることが、あらゆる「思考」の条件となっている場合の思考である。
逆に郡部では、上記の条件(流動性と多様性)が整っていないため、例えば友人の2人が反発すればその意見はおおかた反発を受けることになるだろう、両親が反発をするのならその意見はおおかた反発を受けることになるだろう、という「条件式的思考」を育む。

……と長々と書いてきたが、最も簡略化して言えば、「いったんできあがった『同性愛嫌悪』イデオロギーを共同体が有してしまう*1となかなかひっくりかえすのは難しい」という程度のことか。
また、「都市部に在住」という変数自体に{世帯収入}{教育年数}などの変数が効いている可能性が高いため、擬似相関の疑いがあるだろう。

というわけで、{世帯収入}と{居住2値}でクロス表作成してカイ二乗検定したら……ぬお!!独立だ!

すみません、田舎者のみなさん、居住地で世帯収入は変わりません。(ただしまだ就業形態の{マニュアル/ノンマニュアル}の違いを検討していない)

つぎに{本人学歴}と{居住2値}では……お、1%有意。

居住2値
本人学歴 都市部 郡部 周辺比率
旧制尋常小学校 3.1 5.6 3.7
旧制高等小学校 5.7 11.5 7.1
旧制中学校・高等女学院 4.8 3.9 4.6
旧制実業高校 0.6 0.9 0.6
旧制師範学校 0.1 0.3 0.2
旧制高校旧制専門学校高等師範学校 1.3 1.4 1.3
旧制大学旧制大学 0.7 0.3 0.6
新制中学校 13.2 17.6 14.2
新制高校 39.3 38.2 39.0
新制短大・高専 11.5 9.5 11.0
新制大学 18.2 9.7 16.2
新制大学 0.9 0.0 0.7
わからない 0.3 0.0 0.2
非該当 0.5 1.2 0.6
合計 100%(2127) 100%(663) 100%(2790)


注目は{旧制高等小学校}(教育年数=8){新制中学校}(9)が郡部に居住し、
新制大学}(16){新制大学院}(18)が都市部に居住しているということか。

ここでの目的は「因果関係」を調べることではないけれど、無理やり前向きに*2「因果で」解釈するのが統計的手法の眼目なのでパス図らしきものを描いてみると:

  • {学歴}x1→{居住地}y1
    • →{同性間の性的関係についての意見}y2

ということになりそうね。(でも居住地→同性間も捨てがたいので、回帰式には入れるつもり)
まあ、もちろん、{居住地}→{学歴}というパターンも考えうるけれど、重回帰分析をするつもりなので、そこは棚上げしよう。
ここでは簡単に、{15歳時の居住地}という変数と、{居住地2値}{本人学歴}それぞれとのクロス表を作成して検定してみる。使う変数は以下の問25(2):

問25(1) 〔回答票42〕 あなたが15歳のころ、どのような地域にお住まいでしたか。この中の地域を選び、日本に住んでいた場合は都道府県名をお答えください。(N:2790)

1 (ア) 大都市         14.3
2 (イ) 中都市         22.5
3 (ウ) その他の市       21.4
4 (エ) 町・村         39.5
5 (オ) 外国→<問25(2)へ>  0.5
無回答             1.9

↓(注:15歳のころ日本に住んでいた方に)(N:2770)
都道府県名(    )

【略】

問25(2) それは農山村地域でしたか。(N:2790)

1 はい        45.5
2 いいえ       52.3
無回答         2.2

で、これは両方とも1%水準有意。
つまり、15歳のときに「農山村地域」に住んでいれば、現在「郡部」に住んでいる確率が高く、「学歴」が低い確率が高い。(クロス表は省略)
これは旧制・新制を問わず言えることのようだ(世代を問わない)。
単純なストーリーとしては、「新制高校/旧制中学校を卒業して新制大学旧制高校に入学するために大都市に移住する」というパターンがあるけれども、それは少数派で、「農山村地域」出身者はそもそも高い教育を受けるチャンスに恵まれていなかった、というのが、大雑把な把握だろう。(ただ、旧制師範学校旧制高校旧制専門学校高等師範学校のばあい、{15歳時の居住地}がまったく効いていない。師範学校は授業料も生活費も免除されたため、「優秀な」生徒は師範学校への進学を周囲からプッシュされた、というストーリーも考えられる)
旧制高校
師範学校 - Wikipedia

あと考えないといけなさそうなのが、「出稼ぎ」「集団就職」というやつだ。うーん。わけがわからなくなってきた……
データをいろいろ弄っていれば、どういう風に層別化するべきか、わかるだろうとは思うのだけど、基本に返れば、前日(http://d.hatena.ne.jp/hidex7777/20051118/p3)わかったように、旧制と新制で、{学歴}変数は{同性間}変数にまったく逆の効き方をしているのだった。
あ!ひょっとして……「戦後の民主教育」ってやつ?!!(笑えない。保守派を元気づけるだけのような気がする

  • 1943年(昭和18年):師範教育令
  • 1947年(昭和22年):学校教育法
  • 1949年(昭和24年):国立学校設置法

*1:という事態(「規範」を「共有」するという事態)はいかなる事態なのか、という問題は残るが、棚上げする。

*2:©ISBN:4274066142