「盗め!」から「コピペ!」へ

椹木野依が『シミュレーショニズム』の帯に「盗め!」と書いて(これは浅田の「逃げろ!」に由来するが)から10年以上たった今、時代は「コピペ!」らしい。

そういや昔↓のようなことを書いた。

そこでぼくがイメージするのはインターネットに脳を直接接続して学問を営む光景だ.インターネットに接続された公共空間には,誰もがフリーで使用できる学的蓄積がデータベース化してある.接続者はそれを自由にダウンロードしていいんだけど,いつだってそこにあるわけだから手元におく必要はないだろう(同様のことはすでに映画批評の分野などで起こっている.某評論家は手元の資料をすべて捨てたらしい).接続者は,「この問題はあいつに解かせたほうが手っ取り早い」とおもえば,「問題」と「データ」をオブジェクト化して,「あいつ」に転送する.もちろんアップロード量とダウンロード量のキャパシティにはそれぞれ違いがあるから,WinMXとかWinnyのようなファイル共有ソフトみたいに,キューにスタックされていく.それで時間がかかるようであれば,IMで交渉するか(「これは大事な問題だから急ぎで頼む」とか),ナンバーツーのところに転送してやればよい.当然,アップされてきた(返答された)オブジェクトは公共空間にどんどんデータベース化されていく.問いを発した接続者がそのオブジェクトを整理したり「関連付け」したりするとなお良いだろう.この世界では,思考に著作権もなければ,「誰それの業績」という観念もない.あるのは学的蓄積と学問の進歩だけだ.

まあ、これは教育の問題とは関係がないけど(「学」に貢献できる参加者を育てる「教育」の問題とは異なる)。
ただ、コピペして体裁を整えるという技術の教育も必要ではあるよね。

シミュレーショニズム (ちくま学芸文庫)

シミュレーショニズム (ちくま学芸文庫)