フィリップ・グラス「魔人ドラキュラ」
グラスのシネマ・コンサート来日公演の最終日。オーチャード・ホールはガラガラ。
「魔人ドラキュラ」はあのトッド・ブラウニング監督で、これはめちゃめちゃ面白いですな。ブラウニングの意図をまったく無視した編集がなされていたりして(ラスト、あの教授はなんでドラキュラ邸に残ったんだw)、当時の配給会社と映画監督の関係が垣間見えたりして。
音楽は、マイケル・ナイマンのような、とか言ったら怒られるな。ピアノと管楽器で延々三連符。でもミニマルじゃないぜ。みたいな。いや、良かったですよ(笑)。
グラスはあまり来日してない、ということを今日初めて知ったのですが、日本で未だ受け入れられていないことに関して前島秀国ってライターが
……多くの音楽評論家やライターたち――筆者自身も含めて――がグラスの作風の変遷と発展を聴き分ける努力を怠り、すべて「ミニマル・ミュージック」という安直な言葉で批評を片付けてしまったことにある。「ミニマル[=極小]という用語は、グラスの音楽の本質を正確に表現できない、批評家の貧困なボキャブラリーを指しているのではあるまいか」とは、グラスと長年にわたって共同作業を続けている映画監督ゴッドフリー・レジオの言葉だが、ある音楽家に30年以上も昔に付けられたレッテルを現在に至るまでお題目の如く唱え続けるなど、とてもじゃないが音楽ジャーナリズムの仕事とはいえないのではないか?
と書いていて、まったくそのとおりと思ったわけですが、しかし今の日本でグラスを売ろうと思ったらミニマリズムのお題目以外になにか文脈があるだろうか、と疑問にも思うし、他の文脈を作り出せないジャーナリズムの責任だろうな、とも思うし、しかしまあ作れって言っても無理だろうな、とも思うし、グラスは不遇だなあと思いましたね。いや、日本で売れなくてもグラスは痛くも痒くもないだろうけれど。
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