会計学入門一歩前

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

『女子大生会計士の事件簿』(読んだことない)の作者による「会計学」入門。複式簿記というのは14世紀のイタリアで発明され、日本には明治期に、福沢諭吉によって輸入された……というようなことが簿記検定の教科書の最初の方には必ず書いてあるものだけれど、そういったことはすっとばして、なおかつ数字の動きもすっとばして、身近なエピソードを用いて「会計学」のエッセンスを紹介するという主旨。たとえばタイトルにある「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」という問題は、

  • さおだけという商品にそもそもの需要(ニーズ)がない
  • わざわざさおだけ屋から買うメリットもない

というふたつの問題を孕んでいる。以上の問題点から、「ゴーイング・コンサーン」(企業は継続することを大前提とする)にかなう商売であるとは思われず、さおだけ屋の存在は、大きな謎として立ち現われてくるのだ。
筆者は2つの仮説を立てる。

  1. さおだけ屋は、実は売り上げが高い
  2. さおだけ屋は、実は仕入れの費用が低い

これらの仮説が検証されていくのだけれど、仮説1はほとんど詐欺(いや、文字通りそういう結論なんだよ)としても、仮説2の検証は、ああ、なるほど、と思わせる。といってもすごい結論ではなくて、どちらかというと、はあ、そうですか、みたいなものなのだけど、金儲けってじつはそういう「はあ、そうですか」みたいなシンプルな原則にしかもとづいていないのだ、ということの啓蒙として機能する。とくに冒頭のこの章、「1000円のモノを500円で買うのと、101万円のモノを100万円で買うのと、どちらが得か」という問題(これは後者が得なのだそうだ。費用削減は絶対額で考えなければならない)や、「情報源に偏りがある場合、費用対効果はわからない」というちょっと社会学的なハナシ(効用関数の合成〔の不可能性〕みたいなハナシに似てない?)が面白いと思った。



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