V.社会進化と文字

【26】全体社会の進化のはじまりにおいては、周辺の優勢なよそよそしさが距離感を生み、それがまさに歴史を作るのである。……ただ、区別は別の区別によって抑制されるのである。こうしたことは、単に馴れ親しまれたものの領域がさらに分けられることによってなされるのではない。これは、内向的進歩(回旋Involution)ではあっても進化ではない。
(23)ギアツ
【27】まずは新たな区別に向けての操作を可能にするようなコンテクストの変化が起こる。例えば馴れ親しまれたものとそうでないものとの区別を再定式化することによって、この区別から真と偽、法と不法といった区別が生まれてくる。そうすると、真なるものも真でないものも、法も不法も今や馴れ親しまれたものとして扱いうるものでなければならない。
【28】こうしたことは、区別されたもののなかにその区別が最初に「再参入」された後で初めて可能となる。そうして(初めて)、最初の区別を排除するのではないが、馴れ親しまれたものあるいは馴れ親しまれていないものを問題としつつもその違いは問題にしない立場を表すような一つの「棄却値Rejektionswert」を求めることができる。ゴットハルト・ギュンターは、そうした操作を(選言、連言に対して)「超言Transjunktion」と名づけ、それが二値論理だけでは記述しえない複数のコンテクストに関わるシステムを構成することを示している。
この超言は、そのつどの二値的なコードの内と外において同時に働く。そうして初めて、それが進化を引き起こす。われわれの問題に関して言えば、真/偽の区別が馴れ親しまれたものとそうでないものとの区別から引き離されると、慣れ親しまれたものとそうでないものとの区別は、真偽の区別に関して一つの棄却値を獲得するということをもはや無視することができない。
未規定性という第三の値が表しているのは、真偽の区別が馴れ親しまれていないものには適用できないということである。
(24)棄却値=エポケーの一般化。
(25)Gunther。
【29】
【30】
(26)
【31】生活世界の差異は、最も古く、最も根源的で第一次的な差異である。[諸々のコードが付け加えられたが]これらすべての区別には、諸々の生活世界が凝縮している。複数コンテクスト性の進化とは、もはや論理的ヒエラルキーに組み込まれない区別に基づくものであり、馴れ親しまれたものとそうでないものとの「この」区別はあたかも一つ一つの区別を基礎づけるものであるかのように、そこに立ち帰ることがもはや不可能であることを意味している。
(27)
【32】問題なのは、進化理論に先立つ多くの問題のうちの一つ、すなわち進化とは本来何との関連で説明されるべきかという問いだけである。複数コンテクストの複雑性の進化が問題である。
【33】文字の進化(さらには印刷の進化)⇒文字はまさに馴れ親しまれたものとそうでないものとの区別を流動化することを運命づけるものであるからである。書かれたものはすべて、ある意味で、ある種の馴れ親しまれた世界における馴れ親しまれた形式に固定されたものとして馴れ親しまれたものである。
他方では、誰も書かれたものすべてに馴れ親しむことはできない。文字とは、馴れ親しまれたものとそうでないものとの区別を棄却する制度化された値である。そして書くことは……別のコード化を要求するところの、超言的操作である。書かれた思考物は……誰のために、いかなるコンテクストにおいて、いかなるシステムのために、という問いが必然的に起こってきてしまう。したがって……別の指導的な差異が必要となる。


工事中