まずは辞典を引いてみよう

家族
〔英〕family〔独〕Familie〔仏〕famille

〔定義〕
配偶関係や血縁関係によって結ばれた親族関係を基礎にして成立する小集団。
社会は家族を媒介にしてその存続のエネルギーを引き出し、個人は家族を媒介にして社会に結びつけられる。

社会の存続に「エネルギー」が必要であるという命題自体かなり前提に満ちていると思うが、なにを前提に言っているのか?
相対性理論では物質はエネルギーの一様態であるとされるが、社会の存続に必要なのは物質だけではないし、家族が社会の存続のための物質を供給しているといって、何を言ったことになるのかわからない。

このように家族は、人類社会の存続を可能にさせる社会的装置として、普遍的に存在する基礎集団である。

「普遍的に」は「一般的に」の間違いでは?

家族の内部における構成メンバー間の相互作用の過程は、家族集団に独自な性格をもつものとして閉じた体系(closed system)を構成するが、他方、これらのメンバーは家族以外の社会体系に結びつけられ、家族的位置とは無関係に行動しうる行動領域を持つ点で開いた体系(open system)とみなされる。
このような意味で、家族は半封鎖体系(semi-closed system)である。

仮にシステムの要素を構成メンバーとするとしても、その構成メンバーが他のシステムの要素であったからといって家族システムが開いている理由とはならないんじゃないの?

1〔機能〕
家族の閉じた体系としての側面は、夫婦とその子どもから構成される結合体を基礎的単位として成立する独自な社会関係に示される。
マードックはこれを核家族(nuclear family)と規定し、それを自己同一性と境界を維持する安定した親族集団として、現実のより複雑な家族形態の基礎的な要素としてみなすとともに、この結合体に独自な機能として、性的・経済的・生殖的・教育的機能を重視する。
パーソンズの2機能論(子どもの基礎的社会化と成人の安定化)や、リース(Ira L.Reiss)の単機能論(子どもの愛育的社会化)などは、いずれも他の社会体系とは区別された、この結合体に特有の機能的局面を強調したものである。
このような根本的機能に基礎づけられて、家族は社会の存続に必要な機能を独自に遂行する。
一般には、社会成員の再生産・補充、社会成員の生物学的機能の維持、新しい成員の社会化、財・サービスの生産と分配、社会秩序の維持、社会的活動の動機づけなどが挙げられるが、これらの機能が家族によって遂行される程度はそれぞれの社会構造の相違によって異なる。
他方、半封鎖体系としての家族は、全体社会から影響をうける側面をもつ。
家族内で一定の役割をもつ個人は、同時に家族外の体系において他の役割を遂行することが期待され、家族外で遂行される役割が家族役割に影響を与える。
経済体系は家族員の職業・消費活動をつうじて、政治体系は法・政策によって、教育体系は学校教育をつうじて、さらに宗教体系、親族体系、地域社会などもそれぞれ家族の内部過程に作用する。

2〔内部過程〕
他の組織と同様に、家族もその存続のために不可欠の要件として、生活上必要な財とサービスを準備し、他のメンバーの行為をコントロールしうる能力をもつ特定のメンバーを確定する。
家族の内部過程は、夫婦間の分業関係と勢力関係を一つの軸にして展開する。
マードックは、未開社会の経済活動について性別分業の実態を明らかにしたが、このような構造は、近代化過程におけるイデオロギー次元での性別分業原理の否定にもかかわらず、なお現代においても事実上維持されていることが指摘されている。
しかし、性別分業に対する社会規範・価値観の急激な変化をはじめとする社会構造の変化は、伝統的な分業構造を一層流動的にするための条件を用意しており、性別分業原理をこえた役割関係の柔軟性・代替可能性の検討が要請されている。
夫婦の勢力関係についても、それが社会規範によって規定されるよりも、夫婦夫々がもつ資源(体力、技術、知識、経験、愛情など)の質と量によって規定される傾向がみられ、夫婦の勢力バランスの多様化が指摘されている。

3〔変動〕
M.ヴェーバーデュルケームジンメル、テンニースらは、都市社会における家族の孤立化傾向を強調したが、このような見解は、つづいてワースの「都市化理論」、ジンマーマン(Carl Clark Zimmerman 1897〜)の「原子家族説」、リントンの夫婦家族の「アノミー化説」、パーソンズの「孤立核家族説」などに継承されている。
しかし、都市化・産業化の機能的帰結として孤立核家族を措定し、産業化と核家族の間の確定的な因果関係をみとめる理論的立場に対しては、いくつかの疑問が提出されている。
現代産業社会に適合的な家族類型を、相互に部分的依存状態にある核家族連合とみるリトワク(Eugene Litwak 1925〜)の「修正拡大家族(modified extended family)論」や、家族変動の要因として、産業化という経済的・技術的変数のほかに、夫婦家族イデオロギーという理念的変数の媒介的作用を強調するグード(William J.Good 1917〜)の家族変動論などはその代表的なものである。
(光吉利之)

〔主要参考文献〕
G.P.Murdock, Social Structure, 1949(内藤莞爾監訳『社会構造』新泉社、1978).
T.Parsons and R.F.Bales, Family: socialization and interaction process, 1956(橋爪貞雄ほか訳『核家族と子どもの社会化』上・下、黎明書房、1970・71).
R.O.Blood and D.M.Wolfe, husbands and Wives: the dynamics of married living, 1960.
W.J.Goode, World Revolution and Family Patterns, 1963.
戸田貞三『家族構成』弘文堂、1937;新泉社、1970.
小山隆編『現代家族の役割構造』培風館、1967.
上子武次『家族役割の研究』ミネルヴァ書房、1979.
青山道夫・竹田旦・有地亨・江守五夫・松原治郎編『講座家族』全8巻、弘文堂、1973-74.


世帯
〔英〕household
生計と起居を共にしている社会生活上の単位。
家族との違いは、遠隔地就労や就学、あるいは長期入院や入所などで生ずる別居家族員は別世帯として扱うことが多く、他方、同居人などで生計や起居を共にしているものは同一世帯を構成することもある。

んーと、では、生計はいっしょで起居が別の場合は?*1

園田恭一

*1:家族だが別世帯だ、と書いてある。