2006年に読んだ本ベスト20
今年はあまり本を読まなかった(体力的問題で)ので、20も挙げられるかなーというか10ぐらいに絞ったほうがいいかなーという気がしますが、一応。
例によって、「今年出版された本」じゃなくて「個人的に今年読んだ本」のベストです。一年前のものはこれ2005年に読んだ本のベスト17を - suneoHairWax
【追記】便利!(&ご紹介ありがとうございます)今年の○冊 - chirashino☆ura
[19]森下伸也『社会学がわかる事典―読みこなし使いこなし活用自在』(日本実業出版社)
- 作者: 森下伸也
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2000/12/21
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[18]『センター試験英語〈文法・語句整序・リスニング〉の点数が面白いほどとれる本』
センター試験英語〈文法・語句整序・リスニング〉の点数が面白いほどとれる本
- 作者: 竹岡広信
- 出版社/メーカー: 中経出版
- 発売日: 2005/08
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[17]『人形』(国書刊行会)
- 作者: 種村季弘,エルンスト・テーオドア・アマデーウスホフマン,ハンス・クリスチャンアンデルセン,アンリド・レニエ,ロバート・ルイススティーヴンソン
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 1997/12/01
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澁澤龍彦や江戸川乱歩なども収録されていたのではなかったかな。うちのベッドでこの本をゴロゴロしながら読んでいた当時のガールフレンドが「この本をいきなりプレゼントされたらあなたのこと大好きになっちゃうわ」と言っていた。人形ネタでは次のも。
[16]藤田博史『人形愛の精神分析』(青土社)
- 作者: 藤田博史
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2006/03
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[15]『小西真奈美写真集 「27」』(朝日出版社)
- 作者: 丸谷嘉長
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2006/06/16
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その後この写真集(小西真奈美の6年間を追い続けてその期間のすべての写真を収録したものだ)が出版され、例のCM「ぐびなま」が放映され、WEB上のとあるニュースで(ソースを示したいが出典を忘れてしまった)「ポーカーフェイスでなんでもこなす秀才女優」という評価がなされていたのを読み、小西真奈美の非・被分析性、ないしまなざす「主体」たちの被分析性を高める、その能力が確かなものだと確信したのだった(なにしろこの写真集を作るために6年間彼女を追いかけ続けた写真家自身が、「結局なにもわからなかった」と述べているのだから)。
「ポーカーフェイスでなんでもこなす」と多くの人びとが思う、ということはつまり、多くの人びとが、「そのポーカーフェイスの裏側=真実は?」と考えさせられるという、受動的な状態に置かれることを意味する。そして先に述べたように小西真奈美は「裏側=真実」という存在論的問いかけに対して構成主義的な問いの解消(ルーマン語でいえば「ポスト存在論的認識論」)を行おうとするわけなのだが、その「行い」は言語のうえでの「行い(perform)」にすぎず、身体表現はまさにポーカーフェイス「そのもの」を指し示している。ポーカーフェイスという象徴、つまり記号――ある記号表現は、【実は】彼女の内面のサディズムの記号内容を意味している、のような――ではなく、ポーカーフェイスがポーカーフェイスを意味している、という無差異の、それがそれ以外ではない、という、他の事象・状況をマークされていない空間として排除することによって成り立つ、そのような客体ならざる客体、準対象物として屹立させるのである。このとき羨望は(羨望は存在論的で「記号論的」だから)「私」から奪った同一性を取り返すことができない。いったん私が(対象に)与えた同一性を、いまだ鏡像imageは把持している・と羨望は想像imageする。いやむしろimageから羨望が倒錯的に生じる。当然ながらこの羨望は、何も意味しない=それ自体であるところのものしか意味しないモノ、に固定的意味を追い求めるが、それは堂々巡り、亀に追いつけないアキレス、的に永遠に当たらない矢、とならざるを得ない。
そのようなことを考えたのだが、菊地成孔に代表されるようなフロイディアン(かれは最も正しく80年代の精神分析的言説を継承している)は羨望を「持つ」側の被分析性ではなく、対象の被分析性を高めるためにフロイトを用いる。もちろん精神分析はセッションにおいて成立するものであるから、羨望と対象のどちらに準拠すると「宣言」してみたところで結果は同じであるのだが(セッション〔を観察する分析者〕に準拠していることになる)、精神分析家ではないわれわれが現代においてラカンを受容するひとつの補助線として、このセッション準拠というベーシックに回帰するラインを念頭に置くことは無駄ではないだろうと思う。
[14]好井裕明『「あたりまえ」を疑う社会学 質的調査のセンス』(光文社新書)
「あたりまえ」を疑う社会学 質的調査のセンス (光文社新書)
- 作者: 好井裕明
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/02/16
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「社会調査士」という制度のおかげで、「社会調査」と「社会学」がまるで別のものであるという事実が明白のものとなると思う。社会調査に基づいた社会学はありうるとしても。アクセルレイテッド機能分化。
本書を面白いと感じたのは、著者が社会調査に没頭しながら、徹底して社会調査とは何かを考えながら、そしてそこで考えられていることがありふれた古臭い事柄だとしても、この本自体がひたすら「社会学的」だという点。
[13]小林標『ラテン語の世界』(中公新書)
- 作者: 小林標
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/02/01
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[12]ミッチ・カリン(金原瑞人訳)『タイドランド』(角川書店)
- 作者: ミッチカリン,浅野隆弘,Mitch Cullin,金原瑞人
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/12/30
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[11]山内志朗『ぎりぎり合格への論文マニュアル』(平凡社新書)
- 作者: 山内士朗
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2001/09/19
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この本を「レベルが高すぎる」と評し、「もっとやさしく」をモットーに書かれたのが戸田山和久『論文の教室―レポートから卒論まで』(NHK出版)〔ISBN:4140019549〕なのだが、どう考えても戸田山本の方が敷居が高い(笑)。なんせページ数が多くて読みきれない(笑)。ぼくは途中で投げ出した。(まあ、そのぶん、実践的お役立ち度でいえば戸田山本が上かも)
[10]菊地成孔『歌舞伎町のミッドナイト・フットボール―世界の9年間と、新宿コマ劇場裏の6日間』(小学館)
歌舞伎町のミッドナイト・フットボール―世界の9年間と、新宿コマ劇場裏の6日間
- 作者: 菊地成孔
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2004/07
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そんな昔の本を今年に入って買ったっけ?と考えたら思い出したのだけど、たしか菊地成孔特集の『ユリイカ』〔ISBN:4791701453〕が出て、その山下洋輔対談が面白くて、それから、どうやら「ミスタードーナツのシュトックハウゼン」が本書に収録されているらしいということを知り、それで注文したのだった。
で、いま朝の5:40ですが、さっきすかいらーくに行って確認したら、ぼくはこの本の解説ばっかり読んでいたことに気付いた。……などといっても何のことだかわからないか。この本は、菊地氏の過去9年間のエッセイ等に、2004年のある時期に歌舞伎町のホテルに6日間カンヅメになって自身による解説を付したものなのです。で、その6日間の実況中継が面白くてその部分だけ読んだらしい。今年の4月に。いや、いくつかは(解説じゃない部分を)読んだけど、マイルスとかサン・ラーについての原稿は少なくとも読んでいなかった。
ああ、思い出した。「ミスタードーナツのシュトックハウゼン」が読みたくて購入したのに、当の「ミスタードーナツのシュトックハウゼン」初出の『ユリイカ』〔ISBN:4791700287〕がちゃっかりうちの本棚に入っていて、なんだーちぇーとか思って放り出したのでした。
この本は菊地氏の書籍の中では一番売れているようだすね(Amazonによれば)。『官能と憂鬱を…』〔ISBN:4309267807〕は出てすぐ読んだなあ。あとなぜか『スペインの宇宙食』〔ISBN:4093874654〕も。
この本はファン向けの非重要文献なのだと決め付けてかかって(だって実際読めばわかるけどほとんど書きとばしの原稿なんだもの)今年になるまで避けてたんだね、きっと。
[09]バタイユ(中条省平訳)『マダムエドワルダ/目玉の話』(光文社文庫)
- 作者: バタイユ,中条省平
- 出版社/メーカー: 光文社
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http://d.hatena.ne.jp/hidex7777/20060912/p1
[08]CanCam 増刊 エビちゃんシアタースペシャル版
CanCam 増刊 エビちゃんシアタースペシャル版 2006年 06月号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: 小学館
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蛯原友里は、アウラだけを纏っており(そのアウラは個人的には長谷川京子のそれだと思っているのだが)、そのアウラの中心、アウラを「放つ」核、といったものを完全に欠いており、その「諸」アウラのコンステラツィオンを見出す我々、の方こそがやはりここでも被分析性が高められることになる。
[07]ホゼ・アグエイアス『時空のサーファー』(モデラート)
- 作者: ホゼアグエイアス,高橋徹,Jos´e Arg¨uelles,住倉良樹,椎原美樹
- 出版社/メーカー: モデラート
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マヤの暦についての昨今の混乱については入り組んでいるのでここで述べることはしないが(簡潔にはhttp://www6.plala.or.jp/nagaku/の「マヤ・カレンダー」の項目参照)、ぼくは単純に、複数のカレンダーを同時に使うことは端的に良いことである、というポリシーから、マヤ関連のカレンダー(これに日本の旧暦を付け加えよう)の使用をオススメする。
ただ、「マヤ・カレンダー」を称する、まったく内容の異なるものが二種類出てくることの混乱は、やはりある程度問題であると感じている(日本ではあまり混乱は見られないように思える。ホゼのニューエイジ的プロジェクトに帰依してしまっている欧米圏の人びとの間で混乱がこれから生じてくるんじゃなかろうか。もしくはマヤの伝統暦を認知的不協和からまったく無視するか)。提案としては、初心者はまずドリームスペル暦を実際に日常生活で使用し、慣れること。その次に、それとは異なるものとして、(本来の伝統的)「マヤ・カレンダー」に触れてみること。ぼく自身はこよみ屋で買った13の月の暦(ドリームスペル暦)に準拠した手帳をつかっており、まだ『2012』に完全に乗り換える気はないです。また、ホゼの小難しいツールキットにも手は出していません(笑)。
[06]牧野雅彦『マックス・ウェーバー入門』(平凡社新書)
- 作者: 牧野雅彦
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2006/02/11
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すごいことに、この本、「ウェーバー入門」と銘打ちながら、ウェーバー自身の登場頻度がやたらと低い。
ウェーバー理解のための思想史的文脈、情況論的文脈を、わりと丁寧に(ウェーバー専門家じゃない人にとっては)追っている。ページ数も「ウェーバー以前」に圧倒的に割かれている。そこがすごいと思った。
[05]諸星大二郎『マッドメン』1,2(集英社文庫)
- 作者: 諸星大二郎
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- 作者: 諸星大二郎
- 出版社/メーカー: 集英社クリエイティブ
- 発売日: 2006/07/14
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物語としても面白かった。根本敬「タケオの世界」を髣髴とさせるような。
[04]漫☆画太郎『まんカス』(太田出版)
- 作者: 漫☆画太郎
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これ以上の何かを求めるのだとしたら、「次なるメディア」の誕生を待つしかないだろう。それが何千年先のことなのかはわからないとしても。
[03]レイモンド・カーヴァー(村上春樹訳)『愛について語るときに我々が語ること』(中央公論社)
愛について語るときに我々の語ること (村上春樹翻訳ライブラリー)
- 作者: レイモンドカーヴァー,Raymond Carver,村上春樹
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ぼくがカーヴァーの作品の中で一番好きな「ダンスしないか?」収録。今回のバージョン以前に、文庫本で『ぼくが電話をかけている場所』〔ISBN:4061860453〕に収録されているものを読んで、それでカーヴァーが好きになったんだけど、訳としては、ぼくはそっちの方が好きなのだ。なぜかはわからないけれど。そんなに劇的に訳文が違っているわけではないのに。
[02]熊野純彦『西洋哲学史 古代から中世へ』(岩波新書)
- 作者: 熊野純彦
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もちろん著者の頭の回転のスピードや、次々と変遷する古代の哲学者たちの概説のスピードは、ぼくの頭の回転のスピードの追いつくところではないのだけれど、ちょうどBPM180のドラムンベースのダビーなベースがBPM90で鳴っているように、そこんとこに合わせて踊れば、年寄りに優しい、というか体力的に弱っているぼくに優しい。書いている著者はBPM360ぐらいで思考しているのかもしれないけど。
[01]長岡克行『ルーマン/社会の理論の革命』(勁草書房)
- 作者: 長岡克行
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ルーマンについて、たとえば「物質連続体」っていう(この本には出てこない)概念について書こうと思ったら、これまでは、そこにたどり着くまでに延々と「ルーマン・ベーシック」を論文の第一節に書かなきゃならなかった。「意味ってのが社会学の根本概念で、システムってのは作動からなってて、作動的に閉じてるってのはうんぬんかんぬんで……」というふうに。
これからは、「長岡[2006:207ff.]を参照。」の一文で済む。この経済性が効いてくるのは、ルーマニ屋向けに書く論文よりも、「ルーマンだって? 人文電波でしょ? 社会学と何の関係があんの?」とのたまう他者に向けて書くものにおいてであると思うし、ぼくは実際、そういった他者に向けてしか書く意欲が湧かないのであった。