社会システム理論 第2章9節(前半)
金曜(2006年6月2日)の三田ルーマン研究会。
Social Systems (Writing Science)
- 作者: Niklas Luhmann,John Bednarz Jr.,Dirk Baecker
- 出版社/メーカー: Stanford University Press
- 発売日: 1996/01/01
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Soziale Systeme: Grundriss einer allgemeinen Theorie
- 作者: Niklas Luhmann
- 出版社/メーカー: Suhrkamp Verlag AG
- 発売日: 2012/11/01
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- 作者: ニクラスルーマン,Niklas Luhmann,佐藤勉
- 出版社/メーカー: 恒星社厚生閣
- 発売日: 1993/01
- メディア: 単行本
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- 第2章「意味」
- 第9節「象徴的一般化と予期」(前半)
隔週で行っています。
二週間後は16日ですが関東社会学会(17、18日)とかぶるので(しかも会場が慶応三田校舎なので)中止にして、次回研究会はさらにその2週後、6月30日(金)、『社会システム』第2章9節(後半)&10節の予定です。
ご家族ご近所お友達おさそいあわせのうえ、ふるってご参加下さい。
→http://groups.yahoo.co.jp/group/mls/
podcastingしました。
podcastingページ左下のという画像をiTunes(などのpodcasting対応アプリ)にドラッグ&ドロップすれば聞けます。
はてなユーザの方ははてなRSSが便利です。と思います。
レジュメと配布資料:http://www.geocities.jp/hidex7777/mls/
今読んでいるのは『社会システム――一般理論の概説』第2章「意味」:
- 第02章 意味
- 01 はじめに
- 02 意味概念をめぐって
- 03 意味と情報
- 04 意味と世界
- 05 意味概念の展開
- 06 意味の三つの次元
- 07 体験と行為
- 08 三つの意味次元の分化
- 09 象徴的一般化と予期←イマココ
- 10 意味とコミュニケーション
- 11 意味の形而上学をこえて
です。
第9節はぜんぶで13段落、今回は8段落目まで進みました(次回いよいよ【予期】のおはなしに入ります(とりあえず何も考えずにexpectationを「予期」と訳してしまいましたが「期待」の方がよいのでしょうか?いま『権力』〔ISBN:4326151757〕の訳者解説を読んでいたらパーソンズの文脈で「相補的な期待」というタームが出てきたので。「一般的な先行予解」というタームも出てきましたが))。
この節、はっきりいって難しいです。「象徴的一般化」というと、「あれでしょ?パーソンズが考えた、象徴的に一般化されたコミュニケーション・メディア、略してSGKM*1ってよばれてる、あれ」とお思いになるかもしれませんが、そうです。あれです。SG‐KMのうち、今回SGについて概略を述べる、と。次節でコミュニケーションについて概略し、さらにとんで第4章にてコミュニケーションについて本格的に論じる、と。
- SGからコミュニケーションへ(09節から10節へ)、
- 意味からコミュニケーションへ(2章から4章へ)
議論が進むにあたって、それぞれ
- 「予期」(09節後半)、
- 「ダブル・コンティンジェンシー」(3章)
の議論を挿まないとならない、という点が示唆的で、この点においておそらくパーソンズへの批判/継承を含んでいるのでしょうけれど、まあ、それはおいおい。
以下キーワードによる要約:
- [02-09-01]
- 意味の自己言及的な処理=Akk/Vir差異から出発すること
- これは【象徴的一般化】を必要とする
- 意味の自己言及的な処理=Akk/Vir差異から出発すること
-
- 象徴/象徴的……諸統一がそこにおいて形成されるメディア
- 一般化……ひとつの多様性を作動的に処理する統一の機能
レジュメ3枚目(馬場さんからの配布資料)に描いた図(板書)
- [02-09-04]
- いかにして意味は自己言及的システムの過程の水準で使用されうるのか?
- 自己象徴化
- 自己抽象化
- 自己関係づけの組織化→再利用可能性
- いかにして意味は自己言及的システムの過程の水準で使用されうるのか?
- [02-09-04]
外に出て、たくさんのゴミ箱のなかから、どれが自分のものであるか、言葉も、名前も、概念すら必要とせずにわかる。
*音声ファイル中、今回おそらく唯一のオタクネタあり。
- [02-09-05]
言葉は(ものごとと同様)記号として使用されうること、そして言語から独立して存在するなにかに対する指示として用いられうることを否定するものはいないであろう。しかし言語それ自体を、たんなる記号のネットワークとしては理解することはできない。その機能は、所与のなにかを指示することだけではないし、主要な機能でさえない。(…)その真の機能は、象徴の助けを借りて意味を一般化する点にあり、象徴とは、象徴が成し遂げること【それ自体である】ところのものであって、【他のなにか】を指示するものではない。
- [02-09-06]
- 一般化は、システムと環境の複雑性の落差の処理に役立つが、その他にさらに2つ
- [1]一般化は、意味次元の多様性を架橋し、それらを意味のどの特定の契機においてもアクセス可能なものにしつづける
*appräsentieren/appresentは現象学事典〔ISBN:4335150334〕によれば「付帯現前化」だそうです。
- [02-09-07]
- [2]意味の一般化は事実上、あらゆる論理学的問題の解決を可能にする
- 意味の一般化は、諸地平を現前させ続け、差異の観点からすれば、差異の意味統一へと立ち返ることを可能にする
- [02-09-08]
この段落の、訳出の危うさ/曖昧さについて、音声ファイルを参照してください。
-
- 計算やコミュニケーションが一般化に結びつくとき、それと同時に意味処理のための、顕在化/潜在化‐差異という、作動上の差異図式と、区別/指し示し‐差異は、引き合いに出されない
- 一般化は、それらが生じる形式や方法からきわめて独立した速記記号〔短縮形〕であり、
- それは意識の観念がその産出を負っている神経生理学的過程に還元することができないのと同様
- この独立性は、それを通して可能になる接続に起因する
- 一般化の独立性は地平の拡充によって支持され、また一般化の独立性がその地平の拡充を可能にする
- そして一般化の独立性自身が、それによって獲得した形式を通して、作動上の意味処理のための構造として現われてくる
……やっぱり最後よくわからんです。
「一般化の独立性が獲得した形式」とは?(支払い/不支払い‐差異のようなことか?)
「作動上の意味処理のための構造」とは?この段落だけ読むとAkk/Vir差異のことのように思えるが……(しかしそうすると「現われてくる」というのがよくわからない。引き合いに出されない〔還元(英訳だと単にrefer toになっている)されない〕のではなかった?)
「意味処理」というのは意味の(各次元における)特定化のこと?
●
ぼくがよくわからないことに出会ったときによく参考にする本のうちの一つに、佐々木健一『美学辞典』があるのですが、この本の「象徴」の項は、まあ、いまのところは、ウンチクとして面白い、というふうにしか読めなかったです。
佐々木健一によれば:
- 象徴はそれ自体が創造的であるような記号
- 象徴内容は象徴体と一体化する傾向がある
- symbolonの代表的な意味は「割り符」と「信仰告白」
- ソシュールは象徴と記号を区別し、記号は恣意性を特徴とし、象徴は自然な絆の痕跡を特徴とする、としている
- パースは記号を図像・指標・象徴に分類し、象徴は完全に人為的な約定記号、その代表は言語、としている(ソシュールと正反対)
- 象徴の原型はアトリビュート
- 近代美学の概念としての象徴はアレゴリー(特定の明瞭な概念を表現)との対比として確立(ヴィンケルマン)
- カント、ヘーゲルは象徴をアレゴリーとして理解
- アレゴリーから区別して象徴を重んじる傾向:ヘルダー、カントの「感性的理念」、シェリング、カッシーラー、ランガー
- アレゴリーの復権:ガダマー、ブレヒト、ベンヤミン
- 作者: 佐々木健一
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
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