諸星2冊。

諸星大二郎『不安の立像』(7/100)

短編集。表題作「不安の立像」他、1973年から1984年にかけて描かれた「ホラーっぽいもの」が所収されている。

「立像」とはいっても、その対象が不安を喚起するというよりも、不安の投影先に像が立ち上げられてくる描き方だと思う。
読者を不安にさせたりはしないという意味では、やはり一般的な「ホラー」作品ではないと思う。
良い作品集だけれど、次の『夢の木の下で』と差をつけるために、評価は★★★★。

不安の立像 (ジャンプスーパーコミックス)

不安の立像 (ジャンプスーパーコミックス)

諸星大二郎『夢の木の下で』(8/100)

これも短編集だけれど、2部+1短編という構成になっている。第一部は表題作「夢の木の下で」を「伝説」とした「遠い国から」シリーズ、第二部は「壁男」シリーズ、短編は「鰯の埋葬」。

やはり「遠い国から」シリーズが掛け値なしに、おもしろい。主人公は異邦人として「遠い国」を訪れて、たんたんとあるがままの世界を受け容れていくけれど、最初から最後まで異邦人であり続ける。
読者も、たんたんとその世界を受け容れていくほかはない。しかし読者もその世界にとっては異邦人であり続けなければならず、その世界からこちらに戻ってこなければならない哀しさ、寂しさに耐えなければならない。つらい作品だと思う。
★★★★★

夢の木の下で (Mag comics)

夢の木の下で (Mag comics)