諸星大二郎『暗黒神話』1/100

タケカワユキヒデの解説にあるように、「諸星大二郎作品の入門書」として位置づけられうる、古典。
古事記』をベースにしているものの、そこに諸日本神話、民俗学的土俗信仰、仏教・密教インド神話、天体現象からエリアーデの宗教論まで、ありえないほどの宗教的事象が重ね合わせられ、パラノイアックとしか言いようのない「こじつけ」、構造的同型性の発見がなされる。なにしろ「釈迦から弥勒にいたるアートマンの系譜にヤマトタケル」が位置づけられているのだから!

これは、単純にあとづけの同型性の発見なのだろうか?ある種、構造主義的な、神話の構造の形式的同型性だけが見出されるという、古典的・正統的な説であるともいえる。しかし、たとえば日本神話における固有名が、地域によって異なっていたり、同じ説話が、登場する要素を変えながら各地でローカライズされているのが古代神話の特徴であるとすれば、これはたんなる「同型性」ではなく「同一性」の発見といってもよいのではないか?
諸星の醍醐味は、このような「現代的神話の構造分析」と「宗教的現象のthis-ness」との往復運動、稗田礼二郎のような冷徹な理性と、古代人が向き合っていた現実とのあいだの振り子運動に、読者が巻き込まれるという、あやうい体験にある(実際、諸星を読むと悪夢を見る読者はぼくの身近にもいる)だろう。
ちなみにこの文庫には「徐福伝説」も所収されており、そこに登場する鬯草(時非の花)は、「妖怪ハンター」シリーズの『天の巻』所収の薫・美香兄妹エピソードでも登場するモチーフだ。
★★★★★

暗黒神話 (集英社文庫(コミック版))

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妖怪ハンター 天の巻 (集英社文庫)

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