石井克人:監督『茶の味』(2004)1/100
サイケデリックスの影響を受けた近代的表現、あるいはサイケデリックスをテーマにした近代的表現は無数にあるが、このような「ほのぼの」して「胸キュン」して「泣ける」サイケデリック映画は初めて観た。
「バッドトリップもトリップのうち」はぼくの座右の銘のひとつであるが、この映画にバッドトリップはない。
人物相関図がこの映画の場合は非常に重要だと思うのだけれど、オフィシャルサイトの「キャスト」の項をみればなんとなく面白さというか雰囲気がつかめるかと思う。それより、実際に観れば、最後に「ああ、こうなっていたんだ」とわかるので、相関図を描くのはやめにした。
石井監督による『鮫肌男』に、ぼくはすでにサイケデリック表現を見出していたが、石井監督のスピリチュアリティへの接近のしかたは、たとえば石井聰亙のような神秘主義右翼とは正反対の行き方をする。
1999年3月にぼくが書いた『鮫肌男と桃尻女』のレビューを転載する:
望月峯太郎原作の同名コミックを映画化。浅野忠信主演。若人あきらが一人勝ち、という感も否めないが、実は鶴見慎吾だってかっこいいのだ。ヒロインの子(名前どわすれ*1)の下手さ加減はどーにかしてくれって感じだけど。ただ、ヤクザの登場人物*2が一瞬〈神=絶対〉をかいま見、なんだか悟ってしまって誘拐を途中でやめてしまう、みたいなモチーフは、マンガだと面白いし(岡崎京子やよしもとよしともライン)、良き文学という感じもするが(小説だとひどいものになる。平野啓一郎とか)、映画だとよくあるというか、タランティーノのパクリにしかみえないと思う。気をつけてほしいものだ。良く笑えるナイスな小品。[評価:AA]
自分のHDDを検索してみたら、このように多少否定的に捉えている部分があったのが意外だった(評価はAAで、まあ、★4つぐらいなんだろう)。『茶の味』からレトロスペクティヴに『鮫肌男』を評価するなら、霊性への接近の、コミカルな、すなわちリアリズム的な(ぼくはリアリズムは必然的にコミカルなものになると思っている)方法を模索する準備段階と観ることができる。
ちなみに『茶の味』には浅野・我修院コンビだけではなく、寺島進も重要な役割で登場している。
http://www.chanoaji.jp/
http://moviessearch.yahoo.co.jp/detail?ty=mv&id=320161
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評価:★★★★★