昨日から今朝にかけて生じたことについて。

昨日の22時から今朝にかけて当blogにアクセスした方は、

「一般私人」を名のる方からはてなへの「申立て」があり(氏名の削除依頼)、現在強制的にプライベートモードになっています。事実関係を調査中です。【追記】7月4日22時に「削除」しましたが、強制プライベートモードが解除されません。(斉藤日出夫〔id:hidex7777〕)

という謎のメッセージを読んだことだろうと思います。そのことについて説明します。

19:58、はてなサポート窓口よりメール。

抜粋:

id:hidex7777様にご利用いただいているはてなアンテナ
http://a.hatena.ne.jp/hidex7777/
及び、はてなダイアリーの2004年9月1日付の日記
http://d.hatena.ne.jp/hidex7777/20040901

に、「■■■■」といった一般私人の氏名が本人の了解無く記載されており、プ
ライバシー侵害にあたるとして削除の申立が参りました。
弊社にて検討いたしました結果、利用規約(6)禁止事項の第1項第2号及び第8項に
抵触すると判断し、
勝手ながらid:hidex7777様のはてなアンテナ及びはてなダイアリーを一時的にプ
ライベートモードとする措置をとらせていただきました。
申し訳ございませんがご了承下さい。
はてなアンテナ及びはてなダイアリーパブリックモードでご利用されたい場
合、お手数をお掛けしますが当該情報を削除の上、本メールの返信にて弊社まで
ご連絡いただければと思います。

なおはてなでは、利用規約(6)禁止事項の第1項第2号及び第8項にて以下のように
定めさせていただいております。
「1-2. プライバシーを侵害する行為」
「8.ユーザーは、以上の各項の他、当社が不適切であると判断する行為を行って
はなりません。 」

21:56、はてなサポート窓口へ返信。

抜粋:

下記の件につきまして、

> はてなアンテナ及びはてなダイアリーパブリックモードでご利用されたい場
> 合、お手数をお掛けしますが当該情報を削除の上、本メールの返信にて弊社まで
> ご連絡いただければと思います。

とのことでしたので、
↓のアンテナ、ダイアリーから「■■■■」の氏名を削除いたしました。
早急にパブリックモードへの変更をお願いいたします。

> id:hidex7777様にご利用いただいているはてなアンテナ
(略)
> 抵触すると判断し、


■(下記の件は時間のあるときでかまいません)

また、この「削除の申立」は「■■■■」さん本人からのものでしょうか?
私は■■さんのメールアドレスも知っていますし、
私のメールアドレスも公表しておりますが、
■■さんご本人から私のほうへは「削除依頼」は来ていません。

念のために■■さんご本人に問い合わせてみますが、
1)削除申立ての経緯(「申立て」の主体)、
2)はてなが「利用規約(6)禁止事項の第1項第2号及び第8項に
 抵触すると判断」するに至った経緯

について、ご説明いただければと思います。

このメールを送ったあと、プライベートモード用メッセージを書き換えました。

以下、伏字のところは「Sさん」と表記します。

22:50、Sさんにメール。

抜粋:

おせわになっております。

本日、はてなより下記メールが送られてきました。
#内容は、
#(1)プライバシー侵害により、ダイアリー及びアンテナの公開を一時停止する
#(2)削除の「申立て」があった
#(3)はてなでは利用禁止事項に抵触すると判断し、(1)の措置を講じた
#といったものです

この件に関し、
確認したく、お聞きしたいことがあります。

「申立て」たのは■■さんご本人でしょうか?

では、よろしくお願いいたします。

11:24、はてなサポート窓口より返信。

抜粋:

先ほどid:hidex7777様のはてなアンテナ及びはてなダイアリーをパブリックモー
ドに変更させていただきました。
ご確認いただければと思います。

また、お問い合わせいただきました件につきまして、
申立者より弊社まで削除の申立をいただきましたので弊社にて確認いたしました
ところ、一般私人に相当すると思われる方の氏名が見受けられました。
弊社にて情報削除に関する基準について記述した「はてな情報削除ガイドラインhttp://hatena.g.hatena.ne.jp/keyword/%e3%81%af%e3%81%a6%e3%81%aa%e6%83%85%e5%a0%b1%e5%89%8a%e9%99%a4%e3%82%ac%e3%82%a4%e3%83%89%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%b3
にて一般私人の氏名が記載されている場合、削除を行うと定めさせていただいて
おりますので、id:hidex7777様のはてなアンテナ及びはてなダイアリーをプライ
ベートモードに変更し、id:hidex7777様にご連絡させていただきました。
なお申立者が誰であるかにつきましては、申立者より開示許可をいただいており
ませんのでお伝えいたしかねます。
ご希望にそえず申し訳ございませんがご了承いただければと思います。

ガイドライン

はてな情報ガイドラインによれば、ぼくのblogのエントリは「ユーザー発信情報」にあたります。

今回もんだいになったのは、エントリ内容がプライバシー侵害に抵触する、ということでした。ちなみに「申立人」は次のように分類されるそうです:

  • 公人
    • 国会議員、都道府県の長、議員その他要職につく公務員等
  • 準公人
    • 会社代表者等の公的立場にあり、社会影響力を持つ私人
  • 著名人
    • 著名人、有名人
  • 犯罪関係者
    • 犯罪の被疑者・被告人、その親族
  • 私人
    • 上記以外の一般私人

で、はてな側としては、Sさんを「一般私人」(上記分類でいうところの「私人」)にあたると判断したそうです。

ぼくが問題だと思う点。

情報削除の流れによれば、≪申立の受理≫→≪はてなによる調査≫→≪はてなによる処理≫という段階を経て「情報削除」が行なわれるそうです。
「はてなによる処理」に、次の一説があります:

当該情報がユーザー発信情報のであり、送信防止措置を行う場合には、プライベートモードに固定し発信者自身による削除を要請するなど、できる限り自発的な方法をとる

ぼくが問題だと思うのは、「プライベートモードに固定」した上で「削除」の要請を行なうという点です。

ぼくは以下のような「手続き」が「妥当」と考えます。

  • (1)当事者から情報発信者への申し立て
# S
 『勝手に本名晒さないで下さい。貴方は最低です。人の話に耳を傾けるどころかこんなことをするとはね。
貴方のような不埒な輩からの被害を未然に防ぐためにMLで問題提起するのですよ。』

# hidex7777
 『>Sさん。申し訳ありませんが、上記コメントでは:
1)たんにぼくを罵倒したいだけなのか、
2)勝手に本名晒したことに対して不快感を表明しているのか、
3)MLで問題提起することの理由を説明しているのか、
4)それともひょっとして、本名をエントリから削除して欲しいと要請しているのか、
ぜんぜんわかりません。
もし(4)であればコメントでもメールでもかまいませんので、削除要請を表明してください。よろすこ。』
    • と、「本人」(?)に「もし氏名を削除して欲しいのであれば、要請を表明して欲しい」との呼びかけを行なっているわけです。Sさんは、この呼びかけには答えていません。この呼びかけに答えず、いきなり株式会社はてなを介するのは、誠実さをあまりにも欠いています。「あれを削除してくれ」といわれて、その要請が不当なものではなければそれに応答するに決まっているでしょう。エントリの全面的書き換えも含めて、当事者間で調整する努力をしてみることがまともなコミュニケーションの作法だと思いますが。
    • また、今回株式会社はてながこの「申立人」の申し立てを受け容れたのはこの「申立人」を「私人」として判断した、という前提があったからですが、これには同意しかねます。Sさんは著名な女性学学者の編著に寄稿していらっしゃる著名人でいらっしゃるし、一部メーリングリストでのフレーミングを主な活動としている有名人でいらっしゃいます。その点でぼくとはてなの判断の間には違いがあります。もちろん有名人だから(公人だから、準公人だから)氏名削除の要請に応じない、というわけではありません。誰からであろうと、まともなコミュニケーション上の手続きをとってもらえれば、そしてぼくがその要請を正当と判断すれば、どのような要請にでも応答します。
  • (2)はてなから情報発信者への照会
    • 今回もっとも問題だと感じたのが、このプロセスがなかったことです。いきなり強制プライベートモードに固定した上で、削除請求するのは、表現の自由を最大限に尊重する努力に欠けています。メールで「申立があったので、該当部分を削除して欲しい」と照会があれば、即座に応答することは可能なわけです。迅速さを望むのであれば、「24時間以内に削除して欲しい」などの条件をつければよいわけです。実際、ぼくははてなからメールが送信されてから2時間後には「削除」しているわけです。ところが強制プライベートモードが解除されたのはその13時間後でした。この間、ぼくは「問題となった箇所」以外の情報の送信も不可能となっているわけです。
      • 問題点を整理すれば、≪表現の自由謳歌し、他者を傷つけまくる表現者≫と≪表現によって傷つけられている被害者≫が仮にいたとして、その権利をまず最大限に守られなければならないのは、当然前者のはずです。前者の権利(表現の自由)を最大限に尊重した上で、「被害者によるクレイム申し立て」を処理していく、というのが妥当なプロセスです。
      • もしこの点を株式会社はてなに「クレイム申し立て」したとしても、「ガイドラインを見よ、そう書いてある」という応答があるでしょう。その応答自体は正当です。しかしそのガイドライン自体は不当です。
  • (3)はてなによる情報削除の強制
    • 上記(1)(2)のプロセスを経てもいまだ問題解決に至っていなければ、最終的に(3)の手段を講じるべきです。つまり、今回のように、「削除要請に対して『削除』という対応をしなかったならば(そしてそれ以外の対応をしたのでなかったならば!)強制的にプライベートモードに固定したままにしておく」という手段(今回ぼくに対して株式会社はてなが講じたのはこの手段です)をとればよいのではないかと思います。

以上述べたように、(1)(2)のプロセスをすっとばしていきなり(3)に行くのは、「まずは被害者ありき」という見せかけをとった、不当なプログラムによるトラブル回避です。プログラムはトラブル回避のためにありますが、プログラム自体が正当/不当コードによって観察される、ということもあるはずです(「プログラム」と「コード」については以下の法社会学の教科書の12章を参照のこと)。

法と社会へのアプローチ (Series Law in Action)

法と社会へのアプローチ (Series Law in Action)