菊澤佐江子、2001、「自己報告ディストレス尺度構造の日米比較――NFR、NSFHを用いて――」『家族社会学研究』12(2)

  • 1.問題設定
    • 異文化比較には避けて通れない問題があるよ
      • それは尺度の比較可能性(comparability)だよ
    • CES-D尺度項目にかんして、尺度構造についての確認的因子分析をおこなうよ
  • 2.異文化比較における測定尺度の問題
    • 自己報告尺度の異文化比較が可能であるためには、尺度は次の二条件を満たさなければならないよ
      • 言語的等価性(literal equivalence [phenomenal identity])
      • 概念的等価性(conceptual equivalence)
    • 概念的等価性に近づくための手段は多様だけど逆翻訳(Back-translation)による言語的等価性の達成を通じて概念的透過性に近づく方法が一般的だよ
      • ただし言語的等価性は必ずしも概念的等価性を保証しないよ
    • 概念的等価性を満たしていることを確認する方法として変数間関係(尺度構造)の共通性をさぐる方法が一般的だよ
  • 3.日本におけるディストレス尺度の概念的等価性
    • アングロサクソン人はうつ症状を認知的にうつ感情として表現し、日本人を含むアジア人は身体的症状、あるいは対人問題として表現する傾向が指摘されているよ
      • たとえばCES-Dの20項目について、アングロサクソン人では、うつ感情・身体的症状・ポジティブ感情・対人問題の4因子構造を示すことが知られているけど、日本人を含むアジア人については、うつ感情と身体症状がまとまって一つの因子を構成する3因子構造を示すと報告されているよ
    • 日本人は自己の内的感情を内省的に報告することが少ないから、ポジティブ感情の得点は使えないと言われているよ
  • 4.データと方法
    • 日本についてはNFRJ98を使うよ
    • アメリカについてはNSFH(87-88)を使うよ
    • 項目抽出をして確認的因子分析を行うよ
  • 5.結果
    • (1)項目の抽出
      • ポジティブ感情は項目から除去したよ
      • 逆翻訳をして、概念的・言語的等価性が確かめられた10項目を分析に用いたよ
    • (2)確認的因子分析
      • 仮説は二つあるよ
        • 日米両国で二因子構造を示す
        • 日本については二因子間相関が高く、一因子構造がより適合的
      • (a)仮説1の検討
        • モデルの適合性指標としては1.カイ二乗値、2.Goodness of Fit Index、3.Adjusted Goodness of Fit Index、4.Bentler-Bonett normed fit index、5.Bollen's incremental fit indexの5つを用いたよ
        • 二因子モデルは、日本データに関して、AGFIを除いてほぼすべての適合性指標が0.90以上という高い適合度を示したよ
        • 二因子モデルはアメリカでもほぼすべての適合性指標で0.90以上を示したよ
        • 因子負荷量の推定値は日米ともにすべて予想した方向に統計的に有意だったよ
      • (b)仮説2の検討
        • 予想に反して、日米ともに、二因子間の相関が高かったよ
        • 一因子モデルは、二因子モデルに比べると、両国において同程度、適合性が低かったよ
  • 6.考察と結論
    • 二因子構造は両国において適合的だよ
    • 尺度の文化的特性は従来指摘されていることが確認されたよ
    • アメリカでも一因子構造は適合的だよ