三田紀房『ドラゴン桜』9

ドラゴン桜(9) (モーニング KC)

ドラゴン桜(9) (モーニング KC)

なんでこんなものをぼくは面白いと思っているのだろうと不思議に思っていた。このマンガは受験がひとつのテーマではあるのだけれど、企業としての学校の再建を描いているからではないかと思った(経済システムと教育システムのカップリングの一側面)。

つまり〈教える立場〉から〈学ぶ立場〉への勉強技法の伝授、というありきたりの非対称性ではなく(じっさいそこで教えられる勉強技法はありきたりのものだ)、教師達や生徒の親達や生徒達、受験産業界、受験採点者達(ここでは東大教員)が各々の閉じた観察を行い、教育システムの諸側面を産出し、それぞれの閉じの「うまくいかなさ」を露わにしていく。

主人公桜木がやっていることといえば、「どうだ、うまくいかないだろう」とぺろっと舌を出しているだけ。ミシェル・セールの言い方をまねれば、うまくいかないからこそうまくいく。

それから、このマンガではいろんな参考文献が引用されるのだけど、今回は小林公夫『論理思考の鍛え方』で、発達心理学の成果を我田引水に羅列した「子育て本」にすぎないんだけど(発達心理学の豊富な成果の中から自説に都合のいいものをひっぱてきて自説を補強したもの)、レジュメ的インタビューを載せているのも、マンガの作り方として面白いと思う。

論理思考の鍛え方 現代新書1729 (講談社現代新書)

論理思考の鍛え方 現代新書1729 (講談社現代新書)

船曳建夫氏のインタビューも載っていて、『大学のエスノグラフィティ』は単純に読みたいと思った。それから携帯サイトの『ドラゴン桜IQ革命』というのが紹介されていて、いまのところiモードだけらしい(8月4日からEZwebでも配信開始)のですが、iメニュー>メニューリスト>ゲーム>クイズ>『ドラゴン桜IQ革命』で登録できるとのこと。
大学のエスノグラフィティ

大学のエスノグラフィティ