ドラッグ報道の効果

HEMP is not DOPE but HOPE

大麻:オランダで吸引 日本人旅行者の盗難被害や入院続発

オランダでは大麻が合法と思われがちだが、原則は違法。「一度に5グラム以上の大麻を販売しない」などのガイドラインの範囲内で販売している場合、訴追をしないというだけだ。大麻は幻覚や妄想を生み、精神に異常をきたす大麻精神病になる恐れがある。

厚生労働省は「オランダの政策は、覚せい剤などハードドラッグに捜査を集中せざるを得ないための苦肉の策。『たばこより害がない』などと誤った情報が流れているが、大麻が危険なのは間違いなく、絶対に手を出してはいけない」と強く警告する。【玉木達也】

毎日新聞の記者(?)である玉木達也氏の「意図」は推し量ることができないにせよ(アムステルダムまでコーヒーショップの写真を撮りに行って、現地で取材ができるほどの信頼関係を築いているのだから、かなりのスキモノなんでしょうなw)、厚労省の「おことば」で締める、この手の「ドラッグ犯罪」報道の効果はどのようなものか、興味深い。

おそらく、マリファナに興味が無い読者はこの記事を飛ばす。

「ダメ、ゼッタイ」派は(1)マリファナ・ユーザーが「被害」にあっていること、(2)厚労省が「大麻の危険性」をアナウンスしてくれていること、の2点において安堵する(「切断操作」)。

そして、愛煙家たちは、≪アムステルダム≫という魅惑のキーワードに酔いしれ(笑)、「今年の夏休み、やっぱりアムスだよなあ」と決意する。

一件落着である。とはいえ、この手の無害な報道にぼくがいらだつのは確かだ。なんの討議もひきおこさないからだ。「勝手にやってろ」とも思うが、大麻の犯罪化による、見過ごしてはならない人権侵害の被害者が多数いるという「現実」を覆い隠す機能を、この手の報道が果たしてしまうことを思うと、やりきれなくなる。

ついでながら、この報道について「ベタな」解説を付け加えておく。

  • 「コーヒーショップで大麻を吸って意識もうろうとなり、身ぐるみはがされたという被害が年に数件ある」とあるが、いったい「どこで」身ぐるみはがされたのかが不明。
    • コーヒーショップ店内で強盗事件がおきることはゼロに近い。
    • 「意識が朦朧としている人物」が身ぐるみはがされるのはありふれている。
    • 当たり前だが、強盗の被害者Aは、「強盗の被害者」Aであって、犯罪者ではない。
  • 「02年9月に大麻を吸って体に変調をきたした若い男性の場合、後遺症で半月も現地で入院せざるを得なかった。今年は6月までに、大麻を吸って気持ちが悪くなり、1〜2日入院したケースなど3件が確認されている」とあるが、たったの4ケースしかないことから、大麻の「安全性」が証明されている。
  • 厚生労働省は『オランダの政策は、覚せい剤などハードドラッグに捜査を集中せざるを得ないための苦肉の策。『たばこより害がない』などと誤った情報が流れているが、大麻が危険なのは間違いなく、絶対に手を出してはいけない』と強く警告する。」とあるが、
    • 捜査コストがパンク状態にあるのは日本も同じ。23区内の留置所は現在満員状態で、原宿に大規模留置施設を建設中であることは周知の通り(23区と三多摩地区の管轄の分割も過剰なコストを生み出している)
    • 「煙草より害がない」という情報が「誤って」いることを、「大麻が危険なのは間違いない」というなんのデータにも基づかない単なる断言によって「証明」しようとしている(したつもりになっている)
    • 仮に「大麻が(なんらかの意味で)危険」で、「絶対に手を出す≪べき≫ではない」と仮定しても、そこから一足飛びに、大麻取締法という明らかに憲法違反の法律を導き出すことは不可能
  • などのことから、厚労省の発言は意味不明で、遂行的な機能しか持たない。