おばあさんが死んだ

hidex77772004-03-28

人の砂漠 新潮文庫
沢木 耕太郎 (著)

北田本合評会での、コメンテーター高橋徹さんによる指示文献が、この「おばあさんが死んだ」というノンフィクション。生活保護をかたくなに拒んだ老女が人知れず死んでいた。彼女の借りていた家からは、そのさらに1年前に死んだ兄のミイラ化した死体と、彼女の手による奇妙なノートが発見される。筆者は、この謎に満ちた死をめぐって、多くの登場人物たちから、言質をとろうと奔走する。

この短いノンフィクションは、二つの中心をめぐってぐるぐると円環を描く。一つの中心は当然、死んだ老女佐藤千代の死という出来事である。この《出来事》をめぐって筆者は確定記述を集めてまわる、探求の旅に出る。しかしこの死は何も語ることはない。とても多くの関係者の証言を得ることはできるが、千代の死、という出来事は、なんとも不可解なものとして、宙吊りにされたまま、探求は終わる。謎の、ノート(=対象a)に残されたメッセージからの引用を最後に。

二つ目の中心は、兄、敏勝の死である。この敏勝の死は出来事になることすらない。探求すらされない。敏勝の死は千代の死のエピソードであり、確定記述のひとつにすぎない。

つまり、「謎」はあくまでも千代の死をめぐったものであって、最終的にその死は確定記述に還元できないある種の剰余と「成る」。

そう、出来事の絶対性や、単独性や、「語りえない」非知のモノは、観察の果てに「成る」ものなのだ。


プライベートなことを少々述べると、今月、ぼくの祖母が亡くなった。ぼくにとって非常に重要な人物であったのだが、その死をどのように考えてよいか、どのように捉えればよいか、まったくわからなかった。

葬式システムは合理化されすぎていて、あまりにもあわただしかった。喪の作業をする暇がなかった。あまりにも合理化しすぎていて、喪の作業をシステム化するという機能をはたすことができなくなっている。ぼくは彼女の死体に触れることすらできなかった。最後の亡骸を見たすぐ後には、真っ白な骨しか見ることができなくなり、その数分後には墓の下に入れられて、もう、その死は具体的・物質的対象を持つことがなくなってしまった。

ぼくは骨のかけらをこっそりもらってきた。そこになにかフェティッシュな感情を持つことができて、喪の作業を人工的に作り出せるのではないかともくろんだからだ。しかし、白い骨は、白く、やわらかだった。何度か眺めてはみたけれど、結局ハンカチに包んで、プラスチックのパックに入れてテーブルの上においておくことになった。


さて、喪の作業をきちんとすることができないままで、ぐちゃぐちゃとした感覚のまま、今週末を迎えたわけですが、最悪の風邪をひいてしまい、ぼろぼろでした。

しかしなんとか互助会ミーティングと合評会に出席できました。みなさまどうもありがとうございました。生まれて初めて風邪をひいて頭痛がするという経験をしました。いつもは喉から来るのでイブプロフェン系の風邪薬を飲むのだけれど、今回はピリン系の風邪薬を飲み、身体中がズキズキ痛むので、「目・肩・腰」の痛みに効くという栄養剤を飲み、ユンケルよりも効くという噂の「ゼナ」を飲んだ。二日続けて。一日目は酒が入ったらなんとか元気になったけど、二日目は北田さんに質問を投げるというおそれ多い大役をこなす(こなせなかったわけだが)疲れから、ぼろぼろになってしまった。情けない。。。

それにしても北田さん忙しすぎ。誰か助けてください。ぼくはあんなにタフになれない。

でも北田さん、ほんとうに、おこしくださりありがとうございました。高橋さんも海の向こうからやってきて、ぼくのルーマンUAQにズバッと答えてくださり、ありがとうございました(さあ、そこのルーマニ屋さん、hidexルーマニ屋化計画にあなたも参加しよう!)。石戸さん、部屋を確保してくださり、また(ずいぶん前のことですが)試訳をくださり、ありがとうございました。そして当然、絶妙のモデレートをしてくださった酒井さん、ありがとうございました。角田さん「名刺代わりの論文」ありがとうございます。浅野さん覚えててくださりありがとうございます(w)。前田さん「ネットで活躍中の斉藤さん」というもったいない称号をありがとうございます(酒井さんとは昨日初対面だったんですよ、ほんとに)。えーとあと、あ、昨日は互助会のメンバーの皆さんありがとうございました。みなさんいい人で驚きました。社会学者にいい人がいたなんて!

それにしても個人的なことになるが、馬場さん、高橋さん、石戸さん、酒井さんといったルーマン業界のそうそうたるメンバーに教えを授かるという、なんだかすさまじいことになっております。今年。hidexルーマニ屋化計画(という名の成長系ゲーム)に皆さん、本当に参加してくださいね!参加はココ!>http://groups.yahoo.co.jp/group/arcv/